罰金刑の新設に関する要望
法務省
法務大臣 南野知惠子 様
法制審議会・刑事法部会 委員各位 様
2005年10月24日
カンナビスト運営委員会
拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、新聞等の報道において、法務省で窃盗、公務執行妨害、職務強要の3罪に罰金刑の新設を検討していることを知りました。この罰金刑について、上記の3罪だけではなく、大麻取締法の罰則にも適用するよう、強く要望いたします。
ご存知の通り、日本においては年間2,000人以上が大麻取締法違反で逮捕されておりますが、その大半は組織犯罪やその他の犯罪とは無縁の個人使用目的の単純所持や栽培といった事犯です。個人使用目的の所持・栽培事犯らは一般の刑事犯、財産犯とは違い、直接的、間接的な被害者が存在しません。しかしながら、現在の大麻取締法においては一律に懲役刑しか科せられない状況が続いています。
大麻には過去に言われていたほどの害がないことが先進諸国では一般的に認知されており、EUの主要国、オーストラリア、カナダ、およびアメリカの一部の州では個人使用目的での大麻の所持・栽培は非犯罪化されています。
日本では大麻の所持に対する法定刑が5年以下の懲役、栽培に対する法定刑が7年以下の懲役となっており、欧米諸国と比べてきわめて異様なほど重いものとなっています。たとえ、執行猶予付きの判決が出たとしても、刑事事件の被疑者として逮捕され、長期間にわたり勾留されることで、たいへん大きな精神的苦痛を受けます。また、学生の場合は学籍を失い、会社員の場合は失職に到ることが当たり前のように起きています。これら個人使用目的の事犯のほとんどは前途ある若者であり、現行の刑罰が彼らの将来を大きく制限し、また社会復帰への妨げになっています。
大麻取締法に罰金刑を導入することは「刑務所に入れるのは酷だが、起訴猶予などで処罰しないのは軽すぎる場合のために、罰金刑を新設することにした。」(朝日新聞10月7日付け朝刊)という指針にも合致しています。また、略式裁判による簡易な手続きでの処理が可能になれば、上記のような逮捕によって生じる悲劇もなくすことができます。
もともと昭和38年まで大麻取締法には罰金刑が存在しており、大麻の有害性が従来考えられていた程のものではないとするならば、立法政策として罰金刑を復活させる余地があると提言している法学者もおられます。
日本においても明らかに個人使用目的や初犯の場合には執行猶予付きの判決が下されていることからも、大麻取締法に罰金刑の選択肢を加えることは極めて正当であると思われます。
今回の見直しを機に、是非とも大麻取締法における罰金刑の復活を検討していただけますよう、お願い申し上げます。
敬具
■カンナビストについて
カンナビストは、科学的に見てアルコールやタバコと比較しても有害とはいえない大麻に対して、現行の大麻取締法に基づく取り締まりや刑事罰、および社会的制裁は不当に重く「人権侵害」であるとの主張に基づき、大麻の個人使用の「非犯罪化」(刑罰の軽減化)をめざし活動している非営利の市民団体です。
カンナビストは、大麻に対する誤解や社会的偏見を正すことに主眼を置き、インターネットによる情報提供、ニュースレターの発行、定例会の実施、各種イベントへの参加をはじめとする啓蒙活動などを行っています。
設 立:1999年7月1日
会員数:3,741人(2005年10月1日現在)
ホームページ http://www.cannabist.org/
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