「桂川さんの真実を伝える安曇野勝手連」
よりの緊急報告(2004.2.5)



CANNABISTのみなさまへ

「桂川さんの真実を伝える安曇野勝手連」よりの緊急報告

2004年2月5日
桂川さんの真実を伝える安曇野勝手連

HP上で発信する機会をお与え下さったカンナビスト運営委員会の方々に、深く感謝いたします。

(1)
すでに御存知の通り、桂川直文氏は昨年7月14日早朝、20名近い人数の近畿麻薬取締部捜査員により家宅捜索を受け、大阪に連行される車中で逮捕されてしまいました。それ以来、半年がすぎる現在(1月30日)も保釈はおろか、家族との面会、手紙のやりとりすら禁止されています。

唯一、外界とのやり取りは、弁護士の金井塚康弘先生のみといった状況では、桂川氏が、いま何を考えているのかすら分かりません。裁判は、形式的には9月に始まって4ヶ月の間に3回開 かれましたが、検察官高岡重行氏は、「この事件は現在捜査中であり、追起訴の予定もある」と言い続けるだけで、いずれの回もわずか30分のみしか開廷されず、米山正夫裁判官も、別にそれをとがめるわけでもなく、実質的には先送りされてしまうといった、異常な事態が続いています。

こういった先の見えない状況に、82歳になる高齢のお父さんの心労は激しく、15年来の心臓の病も悪化し、かかりつけのお医者様にも「ムリをしすぎで す。このままでは、倒れてしまいかねないから少し休みなさい」と言われ、精神安定剤を処方される有様になってしまいました。

元々、桂川さんの家は家族で印刷業を営むかたわら、田んぼ、畑も行う兼業農家です。そして田んぼは直文氏が、畑はお父さんがやっていました。2年ほど前に、お母さんが亡くなってからは、直文氏が、その得意の料理の腕をふるって、台所を取りしきってきたのですが、彼の不在の今、お父さんに、その重荷が全て、のしかかってくるようになってしまいました。

想像してみて下さい。畑、田んぼ、家事、そして重い大型の印刷用の輪転機の使用とメンテナンスまでもかかえて、心臓に病を持った82歳の老人が朝から晩まで肉体を酷使して働き続けなければならないことの重さを。

 

(2)
昨年12月24日、大阪地裁に桂川氏の保釈請求をしましたが、26日に保釈却下という決定が下されました。それに対し26日、大阪高裁に抗告申し立てをしましたが、それも却下されてしまいました。このような高裁の判断に妥当性があるのか、一般社会の通念としては、はなはだ疑問に思えます。一般の大麻事犯では、起訴が確定し、裁判が始まれば、まず大抵は保釈が認められています。このような司法当局の対応は、いまお伝えしたような桂川家の実状、そして疲労と心労のたまったお父さんにとってあまりに酷なものではないでしょうか。

桂川氏を保釈をしても逃亡の恐れは全くなく、ましてや6ヶ月におよぶ長期の捜査をし、再三の家宅捜査まで行われた今の時期では証拠隠滅の恐れも殆どないと言っていいでしょう。

このままにしておいたら、桂川氏には、殺人罪や強盗のような、とんでもなく重い刑罰が予想される事態にまで至っています。今までの裁判の流れを見ていると、何か大きく附に落ちないところがあります。検察官の発想の中に、桂川氏の行為に対する誤解と偏見に基づいた独断的な考えがあるように見受けられます。私たちは、その理由を推測したところ、検察官の目に映る桂川直文像というものが、

  • 日本における大麻解放運動の黒幕的存在。
  • むやみやたらと大麻を社会にふりまいて、それによって、社会に騒乱を起こし、無秩序を生み出そうとしている極悪人。
  • 違法だと知りながら大麻栽培を続けた反社会的な犯罪者。

といった私たちが普段、接している温和で礼儀正しい彼の実像とはとても離れたものになってしまっていることがあげられると思います。こういった虚像が裁判官に伝わってしまっているため、凶悪犯に匹敵するような重い厳罰主義的な判断を下され、保釈もされず6ヶ月も大阪拘置所に孤立無援の状態で拘留され続けているのです。これはひとえに、「大麻開放」という側面ばかりが近畿麻薬取締部によって強調されて、本人の実体を飛び越えて大きく膨れあがった結果だと思います。このままにしておくと、彼の本質が理解されないまま裁かれてしまうのではないかという心配が生まれています。

彼もごく普通の人間であって、大切な家族との生活がありますし、家族の人たち(特にお父さん)の彼に対する思いやりや心配といったものは、とても大切です。

私たちは、冷静に、今までの近畿麻薬取締部の捜査と検察の調書を検証して、そこには浮かびあがってこない生身の桂川氏の人柄や真面目さが裁判官に伝わるよう試みたいと思っています。

また、他の大麻事件とは異なった、特殊性も考えていかなければならないと思っています。

私たちは団体、組織ではなく、単なる個人の集まりなので、非力であり、かつ、残された時間も少なく、どこまで、「本当のこと」に迫れるのか分かりませんが、精一杯できることはやりたいと思っています。

大麻愛好者からすれば、日本の法律(大麻取締法)の曖昧な部分(大麻の吸引でなく、所持に罪がかかる。成り立ちがそもそもアメリカ占領政策にある。免許制であるとか)に対するもどかしい苛立ちのようなものを、この裁判で突破したいという気持ちがあるかもしれません。しかし、判決を受け止めて罪に服するのは、桂川氏個人なのです。桂川氏を「大麻開放」の旗印にしてしまうかのような一部の動きには困惑するばかりです。気分的なものに流されて、本人や家族の置かれた状態を考慮せずに、軽々しく騒ぎ立てるのはおだやかな状態ではないと考えます。

また「麻の復権をめざす会」についても、そういった団体が本当に実質的に機能した存在だったのか調べています。近畿麻薬取締部の誘導尋問的な取り調べで、彼の「思想」と「行動」がごちゃ混ぜになってしまい、より鮮烈な印象を検察に与えてしまったのではないかと思われます。

私たちは、「80%の人が賛成しているから○で、10%の人がそうだから×だ」といった統計的な考え方や、「運動の一定の成果のためには、ある特定の個人が犠牲になってもやむを得ない。家族のことは優先的には考えない」といった非人間的な考え方には同意できません。こういった考え方が、ひとりの人生を左右するだけでなく、家族や関係する人たちの人生をも巻き込んで、苦況に追い込んでしまうとしたら同じ地域に生きる者として見過ごすことはできないと思います。

彼がその思いやりとやさしい人柄故に、日本に潜在している大麻を愛する人たちの盾となってしまっている状態を見るにつけ、司法当局と大麻愛好者の板ばさみになってしまっているように思えて、私たちはいっそう、心を痛めるばかりです。桂川氏をひとりの個人として、等身大に見ることからはじめていきたいと考えています。

私たちは、桂川氏が合法的に大麻を扱おうとして栽培免許を取得したはずなのに、何故、このような事態に至ってしまったのかを調査しています。大麻栽培免許の窓口となっていた長野県薬務課の対応には疑問点が多々あります。平成10年から同12年まで取得していた大麻栽培の免許が、13年3月の申請では何故か却下されています。そのことに対して、法律に基づいた期限である90日以内の同年8月に「不服申立書」が本人から提出されました。薬務課の方では、回答する義務があるのに、それに対する回答は全くしていません。そのために、桂川氏は、薬務課からの回答を待つ間は、行政当局には黙認されているのだと勘違いして以前と変わらず栽培を公明正大に、正々堂々と隠れることもなく続けてゆくことになってしまったのではないかと推測されます。

(結果的には、逮捕されることになってしまいましたが)このことは、桂川氏が法律を遵守して大麻栽培を行おうとしていたことを証明していないでしょうか? 「法を壊そう」と企む人が、栽培免許を取得しょうとするでしょうか? 検察は、この点をもう一度きちんと調べ直してもらいたいと思います。

 

(3)
私たちは、桂川氏の地元の長野県に住んでいます。そして、ごく一般的に氏と触れ合って、知り合いになってきました。池田町の造り酒屋の古い蔵が取り壊されて、駐車場になろうとしたとき、古い伝統のある建物を残そうと、立ち上がった桂川氏と出会った人もいます。いつもぎりぎりで仕事を発注するのに、徹夜をして次の日の納期までに仕上げてもらって恩を感じている人もいます。その他、大麻に関係していないところで、さまざまなエピソードを通じて、深く、彼の人格に引かれている人は地元にはたくさんいます。

大麻の栽培免許を収得して、合法的に、真面目に、大麻に取り組んでいたことも、私たちは知っています。  

このように長期間も、彼を拘留して、彼の家族に大きな心の負担と、物理的にも、たくさんの仕事を増し、更に最高刑を求刑しかねないような検察の勢いに私たちは驚いています。大きな誤解と偏見が、彼を取り調べている人たちの心の中にあって、それに基づいて、実態にそぐわない物語が作られているのだとしたら、彼の周囲にいた私たちが何とかしてあげなければいけないんじゃないか。

日頃から桂川氏のことをよく知っている人たちが、ひとつひとつ真実を明らかにしていくことで、この裁判が公正なものになっていくことを心から願っています。

私たちが目指しているのは「桂川さんの一日も早い保釈」そして「執行猶予付きの判決」です。私たちの集まりは、団体・組織のように統率のとれたものではなく、選挙の「勝手連」のようなものです。だから代表のようなものはありません。名前も本当はいらないのですが、多くの人に知ってもらいたいので、あえて「桂川さんの真実を伝える安曇野勝手連」にしょうかなと考えています。この文章も、皆で集まって話し合ったことをまとめたものです。

私たちは、桂川さんの大麻栽培が地域社会に認知されていたのではないか、と考えているのですが、これから地元のいろいろな人を尋ね、それを確かめようと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。

 

2004年2月5日
「桂川さんの真実を伝える安曇野勝手連」呼びかけ人:窪田明彦
連絡先/長野県北安曇郡池田町大字池田4273 桂川印刷気付

※私たちは、HPは持っていませんが、この裁判の資料集などは作り
たいと思っています。その制作などのためのカンパ、応援する手紙
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