北海道余市町2つの高校での生徒処分について

 サロン(掲示板)への書き込みでも取り上げられましたが、先日10月29、30日にマスコミ各社より、北海道余市町にある2つの高校(=私立北星学園余市高等学校、北海道立余市高等学校)で「生徒が大麻を吸った」として自主退学を含む処分が下された事が報道されました。北星余市高校の場合、9月20日付の勧告により2名が自主退学、77名が3〜4週間の家庭謹慎処分となり、道立余市高校では4名が10月下旬に自主退学処分となっています。

 カンナビストは大麻の「非犯罪化」、つまり大麻使用を犯罪(刑事事件)として取り扱うことを問題としており、その場合は原則的に成人が対象となります。

 処分を受けた生徒の中に成人が含まれていたかどうか不明ですが、未成年の場合は法的な扱いが成人とは異なる場合があります。(例:タバコ、アルコールなど)
 また学生の場合は「校則違反」として処分対象になり得ますが、これは学校の校則=教育方針に基づくものであり、「犯罪、非犯罪」の問題とは少し異なります。
 さらに今回のケースは生徒による大麻の「使用(=過去の使用を自己申告)」が処分理由であり、「所持」を対象とする大麻取締法違反で犯罪として問われた生徒は出ていません。

 以上の点からも今回、両校の下した処分に対してカンナビストとして異論を唱えたり抗議したりすることは不適切であると判断しました。

 しかしながら、今回の学校側の処分に際して学校側、生徒、及びPTAなど関係者の間で「大麻=危険な麻薬」といった誤解があるとすれば、わたしたちにはそれを正していくという姿勢が求められると考えます。処分を受けた生徒が今後、不当な偏見などにさらされるような事態は避けるべきです。また、タバコやアルコールと比較しても有害とはいえない大麻を理由に教育途上にある未成年が将来を傷付けられるような処分を受けることは、本来は決して望ましいことではありません。

 従って、今回の件では両校に対して以下の意見書と共にCannabisNews1号〜6号を郵送し、ぜひ参考として頂きたい旨を伝えることにしました。

(2001年11月8日カンナビスト運営委員会)

2001年11月7日

北海道余市高校、北海学園余市高校
校長様並びに教職員の皆様へ

カンナビスト運営委員会
東京都世田谷区桜新町2-6-19-101

今回の大麻問題に関しての意見

拝啓

 今回の貴校生徒による大麻使用に関する処分に関して、苦渋の判断を下されたことと拝察いたします。また、過剰な報道などにより本来の生活が脅かされるような事態が発生していないかと深く憂慮致しております。
 大麻に関しましては社会的にも様々な意見が交錯しておりますが、わたしたちは以下のように考えているということを知っていただきたく、突然の失礼を承知の上でこのようなお手紙をお送りさせていただきました(わたしたちの発行している小冊子「Cannabis News」も同封いたしました)。

* 大麻は行政当局やマスコミ等で言われているような危険な薬物ではありません。厚生労働省の大麻に関する見解は科学的根拠に乏しく、事実無根の誤認を含んでいます。
* 科学的事実に対する合理的判断を尊重し、かつ人権擁護の重要性に対する意識が進んでいるヨーロッパ諸国では大麻の個人使用を容認し、非犯罪化する動きが広まっております。
* 日本では大麻取締法によって過度に厳しい制裁を受け、人生を狂わされてしまった人々が数多く存在しています。

 今回の問題について考える際、ここにあげるような事実があること、そして私たちのような意見があることをご理解いただけないでしょうか。また未来ある生徒たちの将来について十分に配慮されますよう願う次第です。
 
 ここで僭越ながら大麻について簡単に説明させていただきます。
 大麻は中央アジア原産のアサ科の植物であります。古来、どんな土地でも生育するうえ非常に成長が早く、繊維を採る茎をはじめどの部位も役に立つので世界各地で栽培されてきました。縄文時代の遺跡からも大麻の繊維から作られた糸や紐が見つかっています。
 昔から日本人は糸、縄、布、紙などいろいろな用途に大麻を栽培してきた歴史があり、大麻の種は油を取ったり、食用にしたりと、生活に根づいた有用な植物でした。七味唐辛子には大麻の種が入っていますし、お盆の迎え火や送り火に焚く苧殻は皮をはぎ取った大麻の茎です。大麻、麻、マリファナ、ヘンプなど様々な呼ばれ方をしているますが、どれも同じものです。
 明治以降は、北海道では国策として大麻栽培が奨励されたという歴史があることはご存知の通りです。今日、欧米では、大麻から石油化学製品やパルプの代替製品を作る研究や医薬としての有用性が注目されています。

 日本では大麻は占領下の1948年に制定された大麻取締法により規制されており、大麻を所持するだけで最高懲役5年、無免許での栽培の場合は最高で懲役7年という非常に厳しい刑事罰が科せられます。さらに、逮捕あるいは起訴されただけでも、職を失ったり、家庭が崩壊するといった副次的な制裁を受けることも少なくありません。有罪判決を受けた場合、前科者というレッテルを一生背負っていかなければなりません。

 現行法上、違法であることは残念ながら今日の現実として受け止めざるを得ませんし、わたしたちは違法行為を奨励するものでは決してありませんが、教育を受けている途上の未成年が、大麻により将来の人生を傷つけられるような処罰・処分を受けることは本来、決して好ましいとは言えないと思います。

 欧米の研究機関などによる最新の科学的研究の結果を見る限り、大麻が心身に与える害は軽微なものであり、アルコールやタバコほど有害ではないという意見が主流となっています。また、世界的にも大麻の個人使用を容認する動きが近年急速に進んでいます。例えば、本年3月27日の朝日新聞朝刊に掲載された『大麻・欧州「容認」へ傾斜』と題する記事でも取り上げられているように、ヨーロッパ諸国では個人使用の範囲であれば大麻を所持、使用、栽培しても刑事罰として扱わない、いわゆる「非犯罪化」という政策を取っている国があり、今後もさらに増える傾向にあります。
 つい最近でもイギリス政府は大麻の単純所持を取り締まりの対象から外すことを表明しています。こうしたアプローチは「危害の最小化」という考えにもとづいており、大麻を使用することによって生じ得る害と、使用者を罰することによる害とを比較して、個人あるいは社会に対する危害を最小限に抑えることに主眼を置き、対処しようというものです。
 この結果、比較的安全な大麻を使用する行為は刑事罰を科するには値しないという判断に至り、非犯罪化が実現しました。
 こうしてみると、大麻がもたらし得る害の重大さとそれに対する刑罰の重さとを客観的に比較した場合、現状の厳しい大麻取締法は人権侵害といっても過言ではないとわたしたちは考えております。
 
 以上、私たちの意見が多少なりとも参考になればと願いお送りいたしました(この文書について、内容をご検討の上、必要と判断いただいた場合はOB会、父兄会など学校関係者にも広く配布し、問うてみて頂ければ幸いです)。

敬具