成田さんの医療大麻裁判について

成田さんの医療大麻裁判について

■事件のあらまし
 2008年11月18日、 成田さんは東京駅構内で、職質により少量の大麻樹脂とLSDの所持の容疑で逮捕された。難病として知られるクローン病の認定患者であった成田さんは、取り調べ段階から治療のために大麻を所持していたと訴え、東京地裁で行われた裁判で、大麻の所持については無罪を主張し争った。

■東京地裁裁判の経緯
 2009年3月12日の初公判から9月28日の第6回公判まで裁判が行われた。
 公判では、成田さんがクローン病と認定されていること、認定後に大麻が治療に有効なことを知り摂取しはじめたこと、大麻が病状緩和に有効であったという経験的事実が立証された。
 また、アメリカのモンタナ州、ワシントン州、ハワイ州、ロードアイランド州で、医療目的での大麻使用が認められていることを示した文書、カンナビノイド(大麻の有効成分)の薬理論文、そしてアメリカのクローン病の専門医がこの法廷に提出するために執筆したクローン病の治療に大麻が有効であることを訴えた意見書などが証拠として採用された。
 アメリカの専門医の意見書の文末には、成田さんとインターネットの画像通信で対面した上で、日本の病院で検査した医学的データを基に成田さんの治療には大麻が有効であるという診断が添付されている。

 弁護団は最終弁論で、大麻取締法は、医療目的での使用(所持)も禁じているが、これは生存権、自己決定権、幸福追求権に反し憲法違反であり無効であること。また、成田さんは、大麻を治療のための薬として使用していたので、大麻取締法24条2項の定める「みだりに」所持していたことには該当しないこと。
 さらに、自分の体を治療するために大麻を使用していた成田さんには、刑法上の科罰的違法性はないこと。海外には大麻を使った治療法があるにもかかわらず国家権力がその治療を禁じていることの理不尽さ、国民の生命を守るための国家が難病の患者を見捨てている不当性を訴え、以上のような理由により無罪を主張した。

 11月2日の東京地裁の判決は、判決は懲役1年、執行猶予2年であった(検察の求刑は、懲役1年6ヶ月)。

■成田さんの活動、最新情報(2010年6月現在)
 成田さんは、地裁判決を不服とし、東京高裁に控訴するとともに、2010年1月、クローン病の治療のため出国。6月現在、アメリカ、サンフランシスコに滞在し、医療大麻を日本政府、厚労省が認めるよう活動を行っている。
 成田さんの訴えの最新情報などは、成田さんのブログをご覧ください。