『大麻に関する意識調査』実施状況
　大麻をテーマにしたサスペンス・コメディー映画『ワイルド・スモーカーズ』（監督／脚本：スティーブン・ギレンホール、脚本：ニコラス・カザン、主演：ライアン・フィリップ、ビリー・ホブ・ソーントン、ジョン・ボン・ジョヴィ）が東京・渋谷のシネ・アミューズにて1月22日から3月10日までレイトショー上映された。この際この劇場にて、2月5日と2月12日の二回にわたり、大麻に関する意識調査のアンケートを実施する機会が得られた。単館上映ということもあり、両日ともにほぼ満席に埋まり、観客数の約半分にあたる106件の回答を集めることができた。
　大麻をテーマとする映画であるため、当然、大麻に興味がある人が見に来る比率が高いことが予想される。しかし、一般の劇場公開映画であるため、皆が大麻の擁護者とは限らないし、ごく普通の映画ファンが単におもしろそうだから見に来たというケースも少なくない筈である。回答にある程度の偏りが出ることは否定できないが、こうした公共の場で、一般の人々に対して大麻の意識調査ができたことは大きな収穫であり、今後、大麻の自由化の是非を議論していく上で貴重なデータになると考えている。
　アンケートの結果を分析した結果、いくつかの驚くべき事実が明らかとなった。

• 全体の6割が大麻を経験している
• 全体の64%（約3分の2）が大麻を有害あるいは危険なものとはみなしていない
• 全体の75%（4分の3）が大麻の自由化に賛成している

　こうした結果を見ると、危険な薬物として大麻が厳しく取り締まられているという現実と、一般の大麻に対する意識とが大きくかけ離れていることが解る。
　以下に、今回のアンケートの結果を一部抜粋して紹介する。

有効回答数：106 （性別無回答=5、年齢無回答=11）
平均年齢：27.7歳

• 年齢は17歳から58歳までと幅広く分布しているが、20台（20?24歳＋25?29歳）が全体の2/3以上（67%）と突出している。
• このような時間帯（午後9:20からのレイトショー）に映画を見に来る年齢層を代表していると言える。

有効回答数：102

• 全体の半数（50%）が10回以上経験しており、特に20?24歳の年代は60%以上と非常に高い割合となっている。
• 年代ごとの傾向としては、20?24歳をピークに年齢が高くなるほど経験回数／関心ともに低くなっている。
• 40歳以上は例外的に経験回数が増えている（60年代のヒッピー世代を反映しているか、あるいはサンプル数が少ないためと思われる）。
• 意外にも19歳以下では興味なしが50%と多く、大麻の使用に関しては低年齢化は見られない（サンプル数が少ないための偏りである可能性あり）。
• 若干ではあるが、女性よりも男性の方が経験回数が多く、関心も高い。

有効回答数：104

• 全体の約2/3（66%）が同じものと知っていると答えている。
• 予想どおり、経験が豊富または関心が高いほど同じものであることを知っている割合が高い。

有効回答数：104

• 全体的にさまざまな呼び名が用いられている。
• 経験が少ないほど「大麻」や「マリファナ」といった一般的な呼称を多く用いているが、経験とともに別の呼称を用いる傾向が見られる。
• 「大麻」または「マリファナ」と呼んでいるのは未経験者の8割以上なのに対して、経験者は2割以下である。
• 10回以上の経験者はその他を最も多く選択している。
• 安全のために、一般の人には解らない隠語を故意に用いている可能性がある。

有効回答数：102

• 全体の2/3近く（64%）もの人が、大麻はアルコールやタバコよりも害があるとはみなしていない。
• 予想どおり、経験が豊富または関心が高いほど害が少ないと答えている。
• 10回以上の経験者の9割、10回未満の経験者の8割が「思わない」と回答しており、「思う」という回答はほとんどない。
  これらは実体験による評価であり、より信憑性が高いと思われる（アルコールやタバコの経験もあると仮定した場合）。
• あるいは、安全と感じているからこそ、何度も繰り返し使用している可能性もある。
  しかし、数回で止めずに継続して使用している人の方が多いことから、その可能性は少ないと思われる。
• これに対して、未経験者、特に関心のない人の過半数が「思う」と答えている。
• やはり、危険と思っているために経験する機会を逃していたり、興味が持てない理由となっている可能性もある。

• 悪いイメージ（「危険」から「健康に悪い」まで）と良いイメージ（「安全」から「健康にいい」まで）との比率では、良いイメージが79%と圧倒的。
• 全体的に、「気持ちいい」が多く、次いで「健康にいい」、「安全」と続いている。
• 経験別にみると、回答の内容に大きな違いが見られる。
  経験や関心の程度により、「健康にいい」と「健康に悪い」、「安全」と「危険」の比率が逆転している。
  上記の繰り返しになるが、健康にいいとか安全であるといった判断は、少なくとも主観的には経験者の回答ほど信憑性が高い。
• 「カッコいい」と答えたのは未経験者のみ。

　少なくともカッコいいからと試すことはあっても、それを理由に使用を継続することはなさそう。

有効回答数：103

• 予想どおり、経験が豊富または関心が高いほど大麻取締法を詳しく知っている比率が高い。
• 4%であれ大麻取締法の存在を知らないと回答した人がいるのは意外。

有効回答数：105

• 全体の2/3近く（64%）もの人が大麻を危険なものとはみなしていない。
• 予想どおり、経験が豊富または関心が高いほど大麻は危険ではないと答えている。
• 「思う」と「思わない」の比率は経験や関心の度合いによって逆転している。
• さらに、経験や関心のない人ほど、大麻に関する知識が少ないためか、「解らない」という回答が多くなっている。

有効回答数：104

• 全体の3/4（75%）もの人が大麻の自由化に全面的または条件付きで賛成している。
• 条件として挙げられている項目も、年齢制限や自動車の運転禁止など、決して無理なものではなく、妥当かつ実行可能なものが多い。
• 予想どおり、経験が豊富または関心が高いほど自由化に賛成している。
• 「賛成」と「反対」の比率は経験や関心の度合いによって逆転している。

　10回以上の経験者のほぼ全員が自由化に賛成しているのに対して、関心のない人の半分が反対している。

• 全体的に、「医薬品」と「リラクゼーション用」が抜きん出ており、次に「繊維素材」が続いている。
• 経験別にみても、これらの3つはぞれぞれのグループの中である程度の票を得ているが、比率は若干異なっている。
• 興味なしのグループでは「医薬品」の比率が高く、医療使用に対する理解が見られる。
  有効な治療法がない難病などに大麻が有効であることがもっと広く知られるようになれば、さらに比率が高くなると考えられる。
• 興味なしのグループに限り、「利用できない」という回答があり、しかも3番目に多い。
• 10回以上の経験者の回答では、各項目にまんべんなく票が集まっている。
• 大麻に対する関心が高い分、利用価値に関する知識が多いためと思われる。

有効回答数：101

• 当初、「知っている」という回答があったら、交通事故のようなものと考えていたが、なんと全体の2割近い回答を得た。
• 回答者のうち、おそらく2名は面識のある者が含まれていると思われるが、それにしても、これほど知られているとは驚きである。
• 経験が豊富または関心が高いほど「知っている」率は多いのは、当然のごとく予測できる。
• 10回以上の経験者の30%が「知っている」と答えている。

• 特に否定的な意見はなく、応援してくれている人が多い（感謝）。
• 残念ながら、協力したいという意見はなかった。

• 経験者の回答からは、大麻に対する思い入れが強く感じ取れる。
• 一方、経験の少ない人や関心のない人の回答には慎重な意見が見られる。