メルクマニュアルは、内科学のテキストに求められる科目すべてを網羅すると同時に、小児科学、精神医学、産科学、婦人科学、皮膚科学、薬理学、眼科学、耳鼻咽喉科学、その他多数の専門分野の詳細な情報もカバーしており、医師や医学生をはじめ、薬剤師、看護婦、助産婦、保健婦、X線技師、検査技師、栄養士、言語療法士、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、介護福祉士、救急救命士など医療に携わるすべての人々にとって極めて有益な手引書として100年間にわたり支持されてきました。
以下に、本メルクマニュアルに記載されている大麻(マリファナ)関する記述を紹介します。なお、大麻の特性(効果、有害性など)とは直接関係のない記述については省略しています。
第103章 |
医科における歯科 →[全身性疾患における口腔所見]≫リンク≫
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大麻を喫煙すると甘いものがほしくなることがあるため、虫歯には注意すべきという警告。 |
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第144章 |
癌治療の原則 →[副作用の管理:悪心と嘔吐]≫リンク≫
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大麻の有効成分であるTHCは、化学療法による悪心や嘔吐の治療に効果がある。ただし、化学療法の種類によっては効果がなく、また、喫煙ではなく経口摂取した場合に効果が安定しないという問題があったり、眠気や気分の変化を誘発するなどの副作用を伴うため、治療薬として使用できるケースは限られる。 |
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第195章 |
→薬物使用と依存≫リンク≫
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精神依存(心理的依存)を引き起こす薬物の一つとして大麻が挙げられているが、その程度および詳細については事項を参照。 |
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→[大麻(マリファナ)類への依存]≫リンク≫
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大麻の使用による身体依存(禁断症状など)はない。慢性的・定期的な使用による若干の精神依存はあるが、使用を止められなくなるということはまれである。実際、使用者の多くは嗜癖(強迫的使用や薬物による圧倒的な侵襲を特徴とする生活スタイル)に陥ることなく、大麻を使用している。 |
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→[大麻(マリファナ)類への依存:症状と徴候]≫リンク≫
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大麻の作用は2〜3時間持続する。初心者によるパニック症状に関しては、大麻そのものの効果というよりも使用する環境面によるところが大きい。重大な有害作用に関する生物学的影響についてはほとんど立証されていない。喫煙による肺機能や気管支への影響はあるが、その程度は不明であり、大麻しか喫煙していない人においては肺がんの報告はない。大麻は運動能力に影響を与えるので、大麻の影響下にある状態での車の運転や重機類の操作は避けるべきである。また、精神分裂病様症状のある者や妊娠・授乳期間中の使用は避けるべきである。 |
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→[幻覚薬への依存:症状と徴候]≫リンク≫
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フラッシュバックの原因の一つに大麻が挙げられているが、同様にアルコールやストレス、疲労も原因となり、さらには明らかな原因がなくても起こることがある。 |
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→[表195-1.
一般に使用される薬物で依存の可能性があるもの]≫リンク≫
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アルコールをはじめとする他の薬物と比べ、大麻の依存性が低いことが解る。大麻には身体依存はなく、精神依存は他の薬物と比べて低い。また、耐性もTHC含有量の多い場合にわずかに見られる程度である。 |
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第242章 |
乳腺疾患 →[良性乳腺疾患:女性化乳房]≫リンク≫
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思春期における男性の乳房の腫大の原因の一つに大麻の使用が挙げられている。乳房の腫大は若干の痛みを伴うが、一過性の症状であり、使用を止めれば消失する。特に治療を必要とするものではない。 |
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第249章 |
正常な妊娠,分娩,および出産 →[妊娠中の薬物]≫リンク≫
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第250章 |
ハイリスク妊娠 →[危険因子]≫リンク≫
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ヒトについての研究では、妊娠期間中の大麻の使用によることによって先天異常、発達遅滞、または出生後の神経行動障害のリスクが上昇することは確認されていない。ただし、可能性がゼロという訳ではないので、妊娠期間中の使用は避けるべきであろう。 |
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第256章 |
正常な新生児,乳児,小児の健康管理 →[授乳と消化管の
よくみられる問題:授乳婦における薬物]≫リンク≫
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大麻の有効成分であるTHCが母乳に移行することは少ないが、ヒトの場合は血液中から消失する期間が比較的長いので、授乳期間中の使用は避けるべきである。 |
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第274章 |
小児期と思春期の精神障害 →[思春期の精神状態:物質乱用による障害]≫リンク≫
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薬物乱用は薬物の種類には関係なく、個人の性格によるところが大きい。薬物乱用のきっかけは、比較的近づきやすい・入手しやすいという理由から、アルコールやタバコからはじまることが多い。大麻を使用することで、より効果の強い薬物へと移行するようになるという、いわゆるゲートウェイ理論があるが、ここでは、むしろ、アルコールやタバコがそのきっかけ(ゲートウェイドラッグ)になるという結論となっている。 |
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