大麻自由化が進むイギリス
『CannabisNews』第5号(2001年3月15日発行)より


大麻自由化が進むイギリス
魚住吉子 (ロンドン)

2001年、「非犯罪化」の進展
 イギリス政府は相変わらず、大麻を「合法化する意志はない」とつっばねていますが、法律的には表面上現状維持、しかし水面下で法律のざる化が進んでいます。大麻の少量所持の場合、罰金刑以下の「警告」に留まっており、つい1週間ほど前(2月上旬)、「警告」は(雇用に際する面接などで問われても)「報告する必要がない」という格下げがありました。あまりにも使用者が多いため(人口の半数近くが体験者)、「犯罪人」というレッテルを押しつけることの方が、大麻の社会における蔓延よりも有害との判断があったためと思われます。また最近のMS(多発性硬化症)患者その他に対する陪審員無罪判決のおかげで医療大麻に関しては、「警察も周囲の市民も見て見ぬふり」になっています。
 イギリスでは昨年10月に欧州人権法の国内施行が開始され(以前から批准していましたが、今まではストラスブルグに行かなければならなかったのに、10月からは国内の裁判所でこれを根拠に使えるようになった)、この8条、(「社会に迷惑をかけない限り、個人はプライベートな生活を追求する権利がある」といった内容)を大麻逮捕者に適用したいと意気込んでいる弁護士がいます。とはいえ、少量所持がどんどん大目に見られるようになっている現在(空港の税関でさえ、運悪く捕まった場合 - 通常は税関には誰もいない。荷物チェックなしで通れます - でも、アムステルダム帰りの大麻少量なら「ウィンクして見逃してくれた」等の逸話はよく聞きます)、人権法を根拠に陪審員裁判まで持ち込む根性のある人がいないというのが現状です。

2000年5月5日のロンドンマーチ 
 昨年のロンドンマーチ(5月5日に行われる大麻の自由化を掲げた国際的な同時行動)には1万人(行進出発時点での人数、警察発表)が参加、行進中、到着先の公園で人数がふくらみ、主催者側は4万人の参加者を発表しています。口コミ、ミニコミ、インターネットで情報を流したほか、全国紙(The Guardian, Independent, Observer等リベラル系の高級紙)で事前に特集記事を書いてもらえるようアピールしました。プラカードや鳴り物入りで行進、目的地の公園に集合後は、三々五々とピクニック。スピーチとか自発的なアコースティックのバンド演奏(公園で電気を使用してコンサートを行う許可がでなかったため。かえって良かったと好評)、量り売り、ケーキ販売スタンド出現もありましたが、ただ、暖かな日差しの中、気分良くのんびり過ごす一日となりました。事前に行進、および公共の公園の使用許可をとり、当局も事情を知っていましたが、警備に出ていた警官(大麻関係だからではなく、ある程度の人数の集会には必ず出てくる)も、すべて「見て見ぬふり」、逮捕者はありませんでした。(大人数が集まった場合でも、アルコールが入った群衆とは異なる、というのは各地の警察の共通の公式見解です)。
 
 また、はっきりと個人消費目的の栽培を合法化させる(今年5月施行)としたベルギーは、密輸というエリアを曖昧にしたまま消費が公に認められているオランダとは異なる新しい方向性であり、注目されます。
 大麻は栽培が世界的に禁止されている唯一の植物です。イギリスの場合、阿片の原料となるオピウム・ポビーは園芸植物であり、繁殖力が強いこともあって、雑草のように生えています(背丈1メートルほど、濃淡のピンクの花がきれいな植物)。とはいってもこれが麻薬産業にはなっていません。個人的には、桜の花とともに発芽を、トマトとともに成長を、かぼちゃとともに収穫を祝い、クリスマスケーキの頃、家族全員で楽しめるようになることが理想です。