大麻取り締まりを人権問題から再考する
『CannabisNews』第5号(2001年3月15日発行)より


大麻取り締まりを人権問題から再考する

 「大麻問題」とは、人体にも社会にも大きな害を与えない安全な植物、大麻(マリファナ)を「麻薬」とみなし刑事罰で取り締まることの理不尽さにある。大麻は、心身に大きな危険性を持った覚せい剤や、ヘロインのような麻薬ではない。ところが日本では「薬物犯罪」「薬物乱用」という名のもとに覚せい剤、ヘロイン、シンナーなどと同じような扱いを受けている(大麻を扱う「大麻取締法」は、薬物乱用を取り締まるための「薬物5法」のひとつに位置づけられている)。

 大麻は誤解されている。西ヨーロッパの先進諸国では、大麻はアルコールやタバコに較べても有害性が高くないということが共通認識になっている。

 どこにでもいるごく普通の男女が、大麻を持っていたというだけで犯罪者に仕立て上げられ、失職したり、マスコミに実名報道されたりして厳しい社会的制裁を受けている。その数は、毎年、1000人以上に上っている(大麻取締法違反による逮捕者数、1999年は1224人)。大麻取締法は(法律には禁固、罰金、拘留、科料など、もっと軽い刑があるにもかかわらず)死刑に次いで重い懲役刑のみを定めている。大麻の所持は最高5年以下の懲役、栽培は7年以下の懲役である。

 戦後、1948年にGHQの下で大麻取締法が制定されて以降、大麻の摂取が原因で事故や喧嘩、犯罪事件を起こしたというケースは皆無である。飲酒による事故や覚せい剤による傷害事件などが数限りなく起きているのとは対照的である。

 どうして大麻を持っていたというだけで重い刑罰を受けなければならないのだろうか。このような日本の現実は人権侵害ではないだろうか。

 これまで社会的な偏見を恐れ、誰も公には「大麻問題」の矛盾に異議を唱えられなかった。その背景のひとつは、国による大々的かつ扇情的な麻薬・覚せい剤乱用防止キャンペーンの影響で、理性的に「大麻問題」を議論すること自体がタブーになっていたことがあげられる。現代版マッカーシズムといっても過言ではない。

 さらにもうひとつ、大麻が悪いものではないという意見を表明することは、即、発言者自身が取り締まり対象になるのではないか、あるいは捜査対象になるのではないかという恐怖を懐かせた。言論の自由が憲法で保証されていながら、声をあげることができなかったのだ。

 いま人権侵害の中に、新たに冤罪や薬害の被害者、知的障害者への虐待、同性愛者や在日外国人への差別などを加えるようにし、それを救済すべきだという議論が生まれている。それと同様に、大麻を好きだという人間には人権がないのだろうか。時代の趨勢と共に、いまこそ人権問題として声を上げていくことが必要ではないだろうか。

 司法関係者、取り締まり当局、そしてマスコミ関係者のみなさん、「大麻問題」は「薬物犯罪」「薬物乱用」問題ではありません。現在の「大麻問題」は「人権問題」なのだと認識を改めていただきたい。そして、その救済のために、少量の自己使用に限り大麻の所持・栽培を犯罪とは見なさないという対応を提案します(それを大麻の「非犯罪化」といいます)。

 読者のみなさん、カンナビストは日本に於いて、出来るだけ早い時期に大麻の「非犯罪化」が実現するよう世論に働きかけていきます。このような社会的ムーブメントがどれぐらいの影響力を持ち得るかは、組織的な力量も大きな要素になります。それは具体的には、会員数という物差しで測られます。そのためカンナビストは、今年中に会員数500人を目標にしています。