カナダでマリファナ党が設立
2000年6月、カナダのマリファナ法の改正を目指して活動してきたベテラン運動家たちが全国的なマリファナ党の設立を発表した。バンクーバーでの記者会見は、1998年5月に公でのマリファナの使用を理由に閉鎖されたカナビス・カフェが入居していた空きビル内で行われた。党組織者は次の連邦選挙にブリティッシュコロンビア州で最低15人、全国的には50人以上の候補者を出す計画を明らかにした。
この新しい政党の綱領は単純明解---カナダでのマリファナの合法化---である。
党の二人の代表マーク・エメリーとマーク・サン・モーリスは、投票者数、逮捕者数の統計、使用者数の見積もりなどを引合いに出し、マリファナ法の改正が必要な時期にきていると集まった記者に語った。「750万人ものカナダ国民がマリファナを使用したことがあると認めている」とサン・モーリスは述べている。「これは最早、一般社会から外れた得体のしれない一部の集団に限った話ではなくなってきている。政治的活動に対する関心も非常に高く、絶好のタイミングだ」
モントリオール出身の31歳、サン・モーリスはマリファナ党の設立者兼暫定党首である。この新党は、サン・モーリスおよび1998年のケベック州選挙で「Bloc
Pot」(大麻連合)として10,000票を獲得した活動家たちの働きの上に築かれたものだ。遅くとも来年の春、早ければ9月に行われる予定の次の選挙では、その10倍から20倍の票を集めることが党内で期待されている。
「カナビス・カルチャー」誌の発行者、ポットTVのディレクター、さらにカナダ最大のマリファナ種子会社のオーナーを兼ねているエメリーは、国内で最も重要なマリファナ生産地域、ブリティッシュコロンビア州での選挙運動を率いることになる。市民権の侵害と大政党の偽善行為を訴えることに加え、エメリーはブリティッシュコロンビア州におけるマリファナ生産の経済的影響についても指摘している。
ブリティッシュコロンビア州で最大の換金作物のひとつ、「B.C.バッズ」として知られている効力の強い地域作物(マリファナ)は、州の経済にとって50億ドル〔約5,000億円〕の価値があるとエメリーは見積もっている。
エメリーは記者会見で問いかける。「もし、警察によるマリファナ撲滅作戦が成功したら、州は40億ドルから50億ドルもの収入減にどう対処したらよいのだろうか? これは州がかつて経験したことのない経済破滅をもたらす大事件となるだろう」
ブリティッシュコロンビア州では党の候補者を主に市街地と大麻栽培者の砦バンクーバー島に配置するとエメリーは語っている。また、インターネットを選挙運動のツールとして大いに活用していくとも述べている。
高い評価を得ているナショナルポスト紙の最近の世論調査によれば、カナダ国民の約3分の2が少量のマリファナ所持の非犯罪化に賛成しているという。こうした事実を背景に、マリファナ党は将来の見通しを楽観視すると同時に、実際にどれだけのことが達成できるのか現実的な見方も持ち合わせている。
「どの選挙区(郡)でも本気で勝てるとは思っていない」とブリティッシュコロンビア州での選挙運動を率いるエメリーは語っている。「我々の目的は、非犯罪化を公約しておきながら何もしない他の候補者や政党の顔に泥を塗ってやることだ」とエメリーは説明する。「我々はマリファナ問題の重要性が認められ、合法化されるまで断固として戦う」
サン・モーリスもそれに賛成し、次のように語っている。「現在のカナダの選挙システムでは小政党が議席を奪うことは難しい。我々のような小政党でも確実に議席を取れる比例代表制が導入されることを望んでいる」
さらにサン・モーリスは、「我々は金を積むのではなく票によって影響力を得ようとしている」とつけ加えている。「有権者の支持を得るとともにマリファナ合法化に賛成している人数を明らかにすることで、政治的影響力を獲得して法律を変えようという意気込みが生まれる」
サン・モーリスはマリファナの罪で有罪判決を受けた経験があり、モントリオールでの医療マリファナ運動における役割から違法取引の罪に問われているという理由で米国から入国拒否を受けている。まだどの州から出馬するかは決めていないが、自らも立候補する予定だ。そして、カナダが「直下の隣人に目覚ましのモーニングコールを送れる」ようになることをサン・モーリスは望んでいる。
(2000年6月23日 The Week Online with DRCNet, Issue#142より)
※ この記事はDRCNet(Drug Reform Coordination Network, http://www.drcnet.org)の許可を得て翻訳・掲載しています。
マリファナ喫煙による心臓発作の危険性の真偽
2000年3月1日 から 4日 にかけてサンディエゴで開催されたアメリカ心臓病学会(AHA)の心臓血管疾患協議会において、マリファナの喫煙が既に心臓を病んでいる患者にとって心臓発作の危険性を大きく高めるという未発表の研究に関するハーバード大学の研究者からの報告があり、アメリカ国内の各メディアで大々的に取り上げられた。
横になってマリファナを喫煙すると心拍数が上がり、立ち上がった時に心拍数が急に下がるという傾向があり、冠状動脈疾患を病んでいる患者にとっては大きなリスクとなり得るとミトルマン博士は言及している。研究グループは124人のマリファナ使用者を含む3,882人の心臓発作患者に対する調査を行った。このうち37人は心臓発作の24時間以内、9人は1時間以内にマリファナを使用している。研究者によると、喫煙後1時間の危険性は通常時と比べて4.8倍高くなるが、2時間後には1.7倍にまで下がる。
本件に関して、DRCNet(Drug Reform Coordination Network)のThe Week Online(以下WOLと略する)が世界的に有名なマリファナ研究家、ハーバード大学のレスター・グリンスプーン博士にインタビューを行っている。
WOL:グリンスプーン博士、ミトルマン博士の研究報告に対するあなたの評価をお聞かせ下さい。
グリンスプーン博士:(笑)今週になってから、この件に関する電話ばかりかかってくるんですよ。ミトルマン博士とも直接話をしました。実際にはこの論文はまだ書かれていません。要約はできています。1967年以降、米国のメディアは事の軽重を誤り、マリファナの使用が原因と推測される有害作用に関して報道してきた報告や研究の数は図りしれません。お望みであれば、いくらでも例をあげられますよ。「心室の増大、テストステロンの減少、染色体の破壊」などなど。これらは皆、第一面で大きく扱われていますが、いずれも再現されていません。要するに、科学的な評価に耐えないものばかりです。また、これらを否定するような研究については、全く触れられないか、せいぜい31ページ目あたりに小さく載る程度にしか扱われません。
WOL:では、ミトルマン博士の発見を重要視していないということですか?
グリンスプーン博士:そうですね、3,882人の患者のうち、9人が心臓発作が起きる一時間以内にマリファナを使用したということは、わずか0.2%にすぎません。例えば、一日のうち8時間くらいは寝ているとして、単純に計算すると、発作の一時間以内に便通のあった患者は全体の6.7%いたことになります。このような数字が大きな危険要因と解釈されるのは私には納得がいきませんね。
WOL:ミトルマン博士はインタビューの中で、マリファナ喫煙による心拍数の増加が原因と考えられると述べています。
グリンスプーン博士:はい。彼は一分間に40の増加と説明していますが、実際には20程度で、この数字は自宅の階段をかけ上るのと同じレベルの値です。
WOL:ミトルマン博士の危険性を「大きく高める」という指摘には賛成できないということですね?
グリンスプーン博士:私はミトルマン博士よりも、まず最初にメディアを批難したい。彼の要約を読みましたが、結論の中でこのデータを大々的に取り上げることについて注意を促しています。ある程度の危険性があると推測できるとしても、ほとんど測定できない程度のものです。仮に公開されたデータが正しいとしても、それが再現できるかどうかを待つ必要があります。
WOL:あなた自身は、それが再現可能とは思っていないようですね。
グリンスプーン博士:そうですね、1997年にKaiser Permanente社が65,000人のマリファナ使用者を対象とした大規模な研究を行っていますが、死亡率に対するマリファナの影響を見い出すことはできませんでした。もし、本当にマリファナの使用が心臓発作の大きな危険要因だとしたら、そこで発見されないわけがありません。繰り返しますが、私は危険性が全くないとは言っていません。しかし、1967年以降の研究の歴史を振り返ってみて、この発見が他の第一面を飾ったセンセーショナルな記事と同じように無効なものでなかったとしたら驚きです。
補足:1997年4月号のアメリカ公衆衛生ジャーナルの中で、スティーブン・シドニー博士はKaiser Permanente社(医療保険/提供会社として結果の信頼性に強い関心を持つ存在)によって行われた長期間(12年)にわたるマリファナ喫煙者の死亡率に関する研究について記載している。この研究は65,171人の15歳から49歳までの被験者に対して行われた。結果として、マリファナ使用者はエイズでない男性の死亡率および女性全体の死亡率に対してほとんど影響を与えないという結論が出ている。
※ この記事はDRCNet(Drug Reform Coordination Network, http://www.drcnet.org)の許可を得て翻訳・掲載しています。
(翻訳:麦谷尊雄)
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