マリファナの医療使用に関する
 アメリカ政府の研究報告が発表された
『CannabisNews』創刊号(1999年7月1日発行)より


マリファナの医療使用に関するアメリカ政府の研究報告が発表された
∽∽ IOMレポートの概要 ∽∽

 1999年3月17日、米国政府からの研究資金を受けて実施されたマリファナの医療使用に関する研究レポートが、調査開始から2年以上の月日を経て、ようやく公開された。本レポート(以降はIOMレポートと呼ぶ)は、ホワイトハウスの麻薬取締政策局からの依頼を受けて、米国科学アカデミーの付属機関である医学研究所(IOM)がマリファナの効能と健康に対する影響について広範囲にわたり調査したものである。IOMレポートの調査結果は、医薬品としてのマリファナの有効性と安全性を認めるとともに「ゲートウェー」ドラッグ理論(*)を否定するなど、スポンサーである米国政府がこれまで主張してきた内容を否定している。また、医療使用については、喫煙の有害性を理由に限られた条件下での短期的な使用に止めるべきという結論を出している。本レポートの結論に対して、医療マリファナの支持派と反対派の両方の団体から大きな反響があった。
 本調査が実施された背景、レポートの概要、評価と反響について、以下に報告する。

(*) マリファナの使用が、コカインやヘロインなど強い麻薬へとのめり込む入り口(ゲートウェー)となるドラッグであるとする理論。踏み石理論とも呼ばれる。
背景

 1996年11月にカリフォルニア州とアリゾナ州で住民投票によるマリファナの医療使用が認められたことを受け、ホワイトハウスの麻薬取締政策局は1997年1月にマリファナとその成分であるカンナビノイドの健康に対する有益性と危険性に関する「包括的」調査をIOMに依頼した。IOMは公衆衛生に関する問題を調査し、政策の立案に協力することを目的とする民間の非営利団体であり、1970年に米国科学アカデミーによって設立された。本調査は1997年8月に開始され、本レポートの発行をもって終結した。患者からの証言を聞くためのワークショップの開催、カナビス・バイヤーズ・クラブやエイズ診療所への訪問、科学的文献の分析、生物医学者や社会科学者との意見交換などを通じて、広範囲にわたる情報収集が行われた。ワークショップは計3回実施され、一般にも公開された。ワークショップでは、患者とその家族がマリファナの医療使用の体験談や意見を述べ、さまざまな分野から選出された専門家がマリファナやカンナビノイドに関する最新の研究について語り、マリファナの医療使用の賛成派と反対派がそれぞれの立場を支持する科学的証拠を提示した(*1)。証人のなかには、合法的にマリファナを処方されている(*2)ジョージ・マクマホンとエルヴィ・ムシッカの二人も含まれていた。
本調査は、オレゴン保険科学大学医学部長ジョン.A.ベンソン・ジュニアとミシガン大学精神健康研究所の共同所長スタンレー.J.ワトソン・ジュニアの二人の主任研究員を中心に進められた。また、レポートのレビューには、専門家としての立場から、ハーバード大学医学部のレスター・グリーンスプーンやヘブライ大学のラファエル・メコーラムといった著名人が名を連ねている。


(*1)実際には、公開討論会で意見を述べることに難色を示した団体が多かったため(特に医療マリファナに反対する側)、メールや電話を通じて意見の収集が行われた。この結果、賛成派と反対派から、ほぼ同数の意見が集まった。
(*2)1992年に廃止された治験新薬個別療法(IND)プログラムにより使用が認められた数少ない患者。

レポートの要約

 本調査では、次の3つの点に焦点を当てている。

  • 遊離されたカンナビノイドの効能に関する評価
  • マリファナの医療使用に伴う健康面での危険性に関する評価
  • マリファナの有効性に関する評価

 以下に本レポートの内容について要約する。基本的にレポートの記述をそのまま要約しているが、解説が必要と思われる部分については注釈(※)を加えている。

遊離されたカンナビノイドの効能に関する評価

生物学的側面から見たカンナビノイド
 マリファナおよびカンナビノイドに関して現時点で理解できている知識の範囲からは、次のような結論が導き出せる。

  • カンナビノイドは、痛みの軽減、運動機能の制御、記憶力に対して重要な役割を持つ可能性が高い
  • 免疫系に対するカンナビノイドの作用には多くの側面があり、いまだ不明な点が多い
  • 脳はカンナビノイドに対して耐性を築く
  • 動物実験は依存性が生じる可能性を示しているが、ベンゾジアゼピン(*3) 、アヘン類、コカイン、ニコチンほど一般的ではない
  • 動物実験では禁断症状も見られるが、アヘン類やベンゾジアゼピンと比べて、軽いものである

 異なる種類のカンナビノイド受容体(レセプター)は、正常な生理機能に対してそれぞれ異なる影響を与えると推測される。また、カンナビノイドの効果には、これらの受容体とは独立したものも見られる。カンナビノイドが生理機能に影響をおよぼす仕組みは多岐にわたっており、特定のカンナビノイド系に選択的に作用する医薬品を開発できる可能性を示している。
※つまり、マリファナの作用についてはまだ分っていないことが多いが、一般的な治療に用いられているアヘン類や精神安定剤などと比べて、依存症がなく安全ということ。また、上記で「脳はカンナビノイドに対して耐性を築く」とあるが、動物実験では慢性的なTHCの摂取は脳内のTHC受容体の数が一時的に減少するという結果が出ているという指摘と思われる。ただし、マリノールを長期に服用すると効果が薄れるという報告はあるが、マリファナの場合には数十年間にわたり吸い続けても初期と変わらない効果が得られるという証言がある。

カンナビノイド医薬品の効能
 カンナビノイドの効果は一般的に穏やかなものであり、通常はより効果の高い医薬品が存在する。しかし、医薬品に対する反応には個人差があり、ほかの医薬品に対してはよい結果を示さない患者がいる。科学的データは、カンナビノイド医薬品(特にTHC)が痛みの軽減、吐き気や嘔吐の緩和、食欲増進のための治療薬として有効であることを示している。ただし、マリファナの喫煙はTHCを摂取する方式としては粗悪なものであり、有害物質を取り込む危険性を伴う。
 緑内障の治療に対するマリファナの使用を認めるのに十分な証拠はない。また、多発性硬化症などによる痛みを伴う筋痙攣を除き、片頭痛あるいはパーキンソン病やハンチントン舞踏病などの運動障害に対する治療薬としての効果を示す証拠はほとんどない。
※一部の患者にとっては、マリファナは医薬品として有効であるという結論。

心理的効果が治療効果に与える影響
 不安の軽減、鎮静、多幸感といったカンナビノイドの心理的効果は、治療薬としての価値を左右する。こうした影響は、特定の患者や状況にとって好ましくない場合もあれば、有益な場合もある。また、心理的効果は、医薬品としての効能に関するほか面からの評価を困難にする。
 ある患者(特にマリファナの経験のない高齢の患者)にとって、マリファナの心理的影響は不穏なものとなる場合があり、不快感や見当識障害を経験したという報告がある。これは特にマリファナ喫煙よりもTHCを経口摂取した場合に多く見られる。しかし、不安により症状が悪化する運動障害や吐き気に対しては、カンナビノイド医薬品の抗不安作用により、間接的に症状を軽減する場合もある。また、エイズのように多面性の症状をもつ患者にとって、食欲を増進するとともに不安、痛み、吐き気を軽減するTHCの効果は併用療法として有効である。
※つまり、適切な状況下で使用すれば、マリファナの心理的効果は患者の治療に有効に作用するということ。


(*3)ジアゼパム(バリウム)など精神安定剤に用いられる化合物。
マリファナの医療使用に伴う危険性

生理学的危険性
 マリファナの使用による最も有害な即効作用は、精神運動機能の減退である。このため、マリファナ、THC、カンナビノイド医薬品の影響下で乗物や危険な機器類の操作は勧められない。また、マリファナ使用者の中には不快感を経験する者もいる。短期的な免疫抑制作用については立証されていないが、合法的な医療使用を禁止するほど重大ではない。
 タバコの煙と同じように、マリファナの煙はがん、肺の損傷、低出生体重の危険性を高めると考えられている。細胞、遺伝子、人体に関する研究は、いずれもマリファナの喫煙が呼吸器疾患を引き起こす危険要素であることを示唆しているが、実際に習慣的なマリファナの喫煙ががんの原因となるか否かの判断には、計画的研究が必要である。
※ここでは医薬品の摂取方法として喫煙は好ましくないという点を指摘しているのであり、タバコなどと比べてマリファナの危険性が高いという意味ではない。どのようなものでも喫煙すれば燃焼時に発生する有害物質を体内に取り込む危険性を伴うが、これまでマリファナを直接の原因とする肺がんの報告はない。

マリファナに対する依存症と禁断症状
 数は少ないが、使用者の中にはマリファナに依存する者もいる。マリファナに依存する原因となる危険要素はほかの薬物依存と同様であり、特に、反社会的性格や行動障害が薬物依存と深く結びついている。
 マリファナの禁断症状も確認されているが、穏やかで短期的なものである。症状には不穏、過敏、軽い激越、不眠、睡眠障害、吐き気、痙攣などが含まれる。
※コーヒーやチョコレート、あるいはテレビや携帯電話にも依存する人は必ずいる。依存している人がこれらを断つと、イライラしたり、気が滅入ったりするといった禁断症状が生じる。

「ゲートウェー」ドラッグとしてのマリファナ
 マリファナは最も広く使われている非合法ドラッグであり、ほかの非合法ドラッグ使用者のほとんどが最初にマリファナを使用することも当然予測できる。実際、ドラッグ使用者のほとんどは、マリファナの前に(通常は合法的な年齢になる前に)アルコールやニコチンからはじめる。マリファナのドラッグとしての作用が、それに続くほかの非合法ドラッグの濫用と関連することを示す決定的な証拠は存在しない。こうしたドラッグ使用の進行に関するデータは、医療目的での使用に当てはめることはできないことに注意する必要がある。もし、医療目的のマリファナが処方箋により入手可能な場合、非合法な使用と同じパターンを辿ると結論づけることはできない。
 マリファナの医療使用を認めることによって一般の使用が増加するのではないかという社会的懸念があるが、これを支持するだけの十分なデータは存在しない。現在あるデータからは、濫用の危険性のあるほかの薬物と同じように規制されている限り、医療目的のマリファナは問題にはならないという首尾一貫した結論が出ている。いずれにしても、こうした懸念はドラッグの医療使用とはかけ離れた問題であり、治療薬としてのマリファナやカンナビノイドの可能性を評価する要素に加えるべきではない。
※マリファナの使用がほかのドラッグの濫用につながる証拠が存在しないという結論は、ゲートウェイ理論(踏み石理論)が否定されたのと同じことである(もともと根拠のない理論なので、誤りであることを証明するための基準がない)。

喫煙によるマリファナの使用
 喫煙が健康におよぼす危険性から、一般的には喫煙によるマリファナの長期的な使用は勧められない。ただし、末期患者や衰弱性症状のある患者にとっては、長期的な危険性は重要な問題とはならない。さらに、マリファナの喫煙には法的、社会的、健康面での問題が伴うにもかかわらず、特定の患者グループに広く使われている。
 マリファナ喫煙による臨床試験は、特許医薬品の開発ではなく、喫煙せずに迅速に効果を現すカンナビノイド摂取方法の開発を目的とすべきである。しかし、吸入器などの安全で有効なカンナビノイド摂取方法を使用可能となるまでには何年も待たなければならず、その間にもマリファナを喫煙することで症状を軽減できる衰弱性患者がいる。こうした患者のマリファナ喫煙は、期待されるマリファナの効能と、確認または想定されている喫煙の危険性に関する情報を提供するといった看護上の倫理問題の両方の側面から慎重に判断すべきである。
※喫煙の有害性については、「生理学的危険性」の節の注釈を参照。また、生きるか死ぬかの瀬戸際にある衰弱性症状のある患者にとっては、喫煙による害など二の次であり、症状を緩和するためにはマリファナの喫煙もやむを得ないという結論。

勧 告

 IOMレポートはマリファナの医療使用に関して、次のように勧告している。

  1. 合成および植物から誘導されたカンナビノイドの生理学的効果と体内でのカンナビノイドの働きに関する研究を続けるべきである。異なる種類のカンナビノイドには、それぞれ違った作用があると考えられるため、カンナビノイドの研究にはTHC単体の効果の研究を含むべきである。ただし、これに限定してはならない。
    科学的なデータは、カンナビノイド医薬品が痛みの軽減、吐き気や嘔吐の緩和、食欲増進のための治療薬として有効である可能性を示している。効果が迅速に現われることも医薬品としての価値を高めている。
  2. 病状管理を目的とするカンナビノイド医薬品の臨床試験は、迅速に効き、確実で安全な摂取方法の開発を目的とすべきである。
    カンナビノイドの心理的効果は医療価値のを左右する重要な要素となり得る。間接的に影響を与えることがあるため、医薬品としての効能に対する誤った印象を与えたり、併用療法として有益な効果をもたらすこともある。
  3. 不安の軽減や沈静といったカンナビノイドの心理的効果については、臨床試験を通じて評価すべきである。
    多くの研究は、マリファナ喫煙を呼吸器疾患の原因となる重大な危険要素としているが、こうした関連を肯定または否定できるだけの決定的なデータは収集できていない。
  4. 特にマリファナの使用が普及している階層の人々に対して、マリファナの喫煙が健康におよぼす危険性に関する調査を実施すべきである。
    マリファナの喫煙は有害物質を取り込む粗悪なTHC摂取方式であり、一般的な医療目的での使用には推奨できない。しかしながら、マリファナは特定の患者グループに広く使われており、安全性と効果の有無が問題視されている。
  5. 医療目的でのマリファナの臨床試験は、以下の限られた状況においてのみ実施されるべきである:
    ・短期的な(6ヶ月以内)マリファナの使用に限ること
    ・効果が十分に期待できる症状の患者に対して実施すること
    ・研究機関の評議会からの承認が得られていること
    ・効力に関するデータを収集すること
     治療薬としてのマリファナの未来は、単離された成分すなわちカンナビノイドや合成された誘導体にかかっている。単離されたカンナビノイドは粗植物の混合物よりも信頼性の高い効果をもたらすだろう。このため、マリファナ喫煙の臨床試験は、特許医薬品の開発を目的とするのではなく、喫煙することなしに迅速に作用するカンナビノイド摂取方法の開発を目指すべきである。
  6. 衰弱性症状(手に負えない痛みや吐き気)のある患者が、マリファナを喫煙により短期間(6ヶ月以内)使用する場合、以下の条件を満足しなければならない:
    ・いかなる認可医薬品を用いても症状を軽減できないことが文書で証明されていること
    ・症状の軽減が十分に期待できること
    ・医師の監視下で治療効果が判定できる方法で実施すること
    ・医師が患者に特定の用途でマリファナを提供する場合、不注意な誤りを防止するために組織化した評議会などによる検閲を実施すること

 

IOMレポートに対する反響と評価

 1997年に本調査が開始されてから、1998年にはさらに5つの州で住民投票が行われるなど、医療マリファナの合法化を求める要求は高まる一方である。こうした状況の中で、政府からの研究資金を受けた権威ある調査として、IOMレポートに対して大きな関心が寄せられていた。残念なことに、政治的な理由から、本レポートにはマリファナの法的な扱いに関する評価を含めてはならないという制限が課されている。このため、医療マリファナの合法化の是非は勧告の中には含まれていない。本調査結果に対しては、医療マリファナの支持派と反対派の両方の団体から大きな反響があった。
 麻薬取締政策局バリー・マッカフリーは、これまでマリファナを「チーチ・アンド・チョン(*4)の薬」と呼ぶなど、医薬品としてのマリファナの有効性を示す証拠など「みじんもない」と述べてきた。本レポートの調査結果は、こうした主張を真っ向から否定する結果となった。麻薬取締政策局はIOMレポートの勧告を慎重に検討するという声明を発表している。プレスに対するマッカフリーのコメントは、マリファナの喫煙に治療薬としての効果があるという調査結果を無視し、喫煙を必要としない代替手段の勧告に焦点を当てたものである。「レポートの結論として、カンナビノイド医薬品の将来はマリファナの喫煙ではなく、化学的に確定した医薬品の開発にあるという点に留意している」また、マリファナの喫煙は連邦法の下では非合法でありつづけるともコメントしている。
 ワークショップに証人の参加をアレンジするなど本調査に積極的に関わってきた医療マリファナの支持団体MPP(Marijuana Policy Project)代表チャック・トーマスは、次のように述べている。「IOMレポートの科学的証拠は、マリファナが多くの患者にとって比較的安全で有効な医薬品であることを示している。このレポートの結論からは、マリファナを使用している患者が逮捕されたり、刑務所に送られることがあってはならない。また、IOMレポートの調査結果は、MPPの主張と次の点で一致している:(1)患者にとって刑務所がマリファナの使用よりも好ましい証拠は存在しない、(2)マリファナの医療使用についてさらなる研究を続ける間、患者のマリファナの使用を認めるべきである」
 NORML(全国マリファナ法改正協会)代表アレン・サン・ピエールは、このレポートを「科学的というよりも政治的なもの」と見なしている。サン・ピエールは、IOMがすべての合法的な薬物療法が有効でないと確認された場合に限り短期的なマリファナの喫煙を勧めている点を指摘している。「このレポートは実体験からのマリファナの医療価値を訴えた数多くの患者の証言を無視し、マリファナに対してほかの医薬品や法的に要求されている以上の高い基準を要求している」また、「マリファナの喫煙が特定の患者に有効であることを認めながら、より良い方法が開発されるまで辛抱すべきなどと勧告するのは、臆病な政治的判断でしかない」と批判している。
 IOMレポートのレビューにも参加したレスター・グリーンスプーンは、これを「妥協の産物」と呼ぶ。「本レポートは、マリファナの医療価値の否定を緊急課題とする行政機関と、医薬品としてマリファナを有効に使用している人々の増加という現実との間に妥協点を見い出そうとしたものだ」また、IOMレポートは、多発性硬化症をはじめとする運動障害の治療に対するマリファナの有効性を示す事例証拠が「山ほどある」という事実を重要視していないと述べている。さらに、グリーンスプーンは、カンナビノイドを摂取するための装置としてマリファナ・ベーパライザ(気化器)(*5) に関する議論を省略している点を批判している。こうした装置はすでに存在しており、発がん性物質を排除してマリファナの有効成分のみを安全に摂取することが可能であると述べている。


(*4)米国の二人組コメディアン。1970年代にマリファナなどドラッグを扱ったコメディー映画に数多く出演。代表作に『Up in Smoke (スモーキング作戦)』がある。
(*5) 燃焼点よりも低い温度でマリファナの有効性分のみを気化させる装置。アメリカでは違法だが、カナダでは販売されている。

まとめ

 本レポートの結論に対して、まだまだ踏み込みが足りないなど医療マリファナの賛成派からも厳しい評価が出ているが、マリファナの医療価値を認め、ゲートウェイ理論を否定したという意味では、医療使用の認可に向けた大きな前進であり、高く評価して良いだろう。
 米国政府による研究資金を受けたマリファナに関する調査はこれが最初ではない。これまでにも、1972年にニクソン大統領の下に設置されたシェイファー委員会の報告がある。しかし、ニクソン大統領は、マリファナの個人使用を非犯罪化すべきとするシェイファー委員会の勧告を無視した。はたしてIOMレポートもこれと同じ道を辿ることになるのだろうか? 連邦法に反して、州レベルで次々と医療マリファナの合法化が進められている現在の状況においては、本レポートを完全に無視することは不可能だろう。本レポートが将来的により安全な摂取方法が開発されるまでの代替案として、一部の患者にマリファナの喫煙を認めても良いとする勧告に対して、米国政府がどのように応えるのか興味深い。
 また、IOMレポートは、これまでマリファナ反対派が切り札としてきたゲートウェイ理論を否定した一方で、喫煙の有害性を強調している。このため、今後のマリファナの使用の是非をめぐる議論の焦点は、ゲートウェイ理論から喫煙の有害性へとシフトする可能性が高い。

(麦谷尊雄)

 

ニュースソース
1. The week Online with DRCNet
2. NORML
3. CNN
4. MSNBC
5. High Times
IOMレポートの概要版はこちらから入手可能。