北海道新聞の記事に対する意見書

2004年12月18日の北海道新聞に掲載された「伝えて感じた 2004記者回顧」という記事に関して、薬物問題についての本質的な観点が抜け落ちている内容であったことを指摘するとともに、大麻に対する規制や刑罰を見直すべきであるという主張が日本にもあることを紹介し、今後の参考にしてほしいとする意見書を北海道新聞社宛に送付しました。



意 見 書

(株) 北海道新聞社
  代表取締役社長 殿
  記者 奥天卓也 殿

2005年2月17日
カンナビスト運営委員会

前略

わたしたちは現在の大麻の取り締まりの見直しを訴えて活動している市民団体です。先頃、北海道の会員の一人から、2004年12月18日の北海道新聞に掲載された「伝えて感じた 2004記者回顧」という記事が送られてきました。この記事を読んで、わたしたちは以下のような印象を持ちました。今後、大麻問題について報じる際の参考にしていただきたいと願い、以下のような意見書をお送りいたします。

 まずはじめに、わたしたちは、御社が、将来に向けよりよい日本社会を築いていきたいというスタンスから多様な社会問題をとりあげていることに共感しております。その上で、今回の記事に関しては、薬物問題についての本質的な観点が抜け落ちており、表層的な内容であったという印象を懐きました。

 わたしたちは、「薬物乱用」、「薬物汚染」という言葉で、大麻と他の薬物がひとくくりにされている現状に問題があると強く感じています。シンナー、覚せい剤、麻薬、大麻は化学的にも全く別のものであり、心身に与える影響や有害性も大きく異なります。大麻に関しては、アルコールやタバコよりも害が少ないというのが海外の最新の研究結果として明らかになっており、欧米の先進国では大麻の少量の個人使用は犯罪として扱わない、いわゆる非犯罪化政策を取っているところがほとんどです。これは、大麻を使用することによって生じ得る弊害と、使用者を罰することによる弊害とを比較して、どちらが個人あるいは社会にとって弊害が大きいかを客観的に判断した結果です。
  しかしながら、日本では、このような事実について触れられていないどころか、覚せい剤や麻薬などと同じように危険な薬物として扱われているのが現状です。大麻を危険なものとして取り上げている雑誌記事や書籍、マスコミ報道などを見ると、既に否定されている過去のデータに基づいていたり、科学的に信ぴょう性の低い情報が含まれていたり、出典が明らかにされていない(できない)情報に基づき書かれているものがほとんどです。マスコミは、このような事実を歪め、過度に危険性を誇張した情報を一方的に発信しているといわざるを得ません。また、わが国の薬物教育は、公正な知識・情報を公開することを怠り、いたずらに恐怖心を煽るだけのものになっています。しかし、こういった薬物教育は成功しているとは思えません。逆に、こうした姿勢が若者たちの反感を買ったり、信用を失わせているのではないかという危惧を抱いています。

 大麻に対する規制や刑罰を見直すべきであるという主張は日本国内にもあるのですが、残念ながらこれまで主要なマスメディアで取り上げられることはありませんでした。一方で、高校生や大学生の間での大麻の蔓延、大規模な栽培・密輸、あるいはマスコミ関係者の逮捕・解雇処分といった報道を数多く目にしてきました。しかし、なぜ大麻がこれほど厳しく取り締まらなければならないのかという本質的な議論にまで踏み込んだ報道は残念ながら皆無です。

 このように社会的に意見が対立している問題については、出来る限り多くの角度から論点を明らかにし、偏見にとらわれない公正・中立な視点を貫くことが報道機関の原則であると理解しております。「大麻ぐらいで、なぜ逮捕されるのかわからない」という意見が出ていることについても、とんでもないと切り捨てるのではなく、なぜそのような意見が出ているのか、真剣に耳を傾け、考えていただきたいと思います。大麻は本当に有害なものなのか。少量の大麻を所持・栽培する行為は犯罪として取り締まらなければならないほどのものなのか。大麻を規制するための法的・社会的制裁は果たして妥当なものなのか。それが本人および社会のためになっているのか。ただ単に犯罪者を増やしているだけではないのか・・・ぜひとも先入観に囚われることなく、誤解や偏見のない客観的な目で、真実を見極めていただきたいと思っています。わたしたちは、マスコミ関係者が大麻問題について正確かつ公正に報道していただけるようになることを切実に願っております。

 北海道においても大麻の規制の見直しを求める運動が活発化してきています。5月には札幌市内で市民集会・イベントも計画しています。詳細が決まりましたら、案内をお送りしますので、その際にはぜひとも取材・見学にいらしてください。また、取材に関しては、ご連絡いただければ、いつでも対応いたします。

 最後に、根拠のはっきりとしない法律によって、将来のある多くの若者たちの人生が傷つけられている現状を一刻も早く是正していかなければならないと強く感じています。

 以上、よろしくお願いいたします。

【カンナビストについて】
カンナビストは現在の不当に厳しい大麻取り締まりの見直しを求めて活動している非営利の市民団体です。
  設 立:1999年7月1日
  会員数:3,343人(2005年1月31日現在)
  ホームページ http://www.cannabist.org/
カンナビストは、科学的に見てアルコールやタバコと比較しても有害とはいえない大麻に対して、現行の大麻取締法に基づく取締りや刑事罰、および社会的制裁は不当に重く「人権侵害」であるとの主張に基づき、大麻の個人使用の「非犯罪化」を提案しています。

カンナビストでは、大麻に対する誤解や社会的偏見を正すことに主眼を置き、インターネットによる情報提供、ニュースレターの発行、定例会の実施、各種イベントへの参加をはじめとする啓蒙活動などを行っています。今春には日本弁護士連合会に対して、大麻問題について「人権救済申立」を行います。

 カンナビスト運営委員会
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  電子メール:info@cannabist.org
  http://www.cannabist.org/